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生体計測工学研究室


革新技術で毎日が無自覚の健康診断

ユビキタス医療のための無意識的な検診システム

年1回の健康診断よりは日々の検査が早期発見につながりますが、毎日の検査などは煩わしくて長続きしません。この問題を解決するのが無意識的(または無自覚的)検査です。すなわち自分では検査など意識しなくても生活の中で自動的に検査されてデータが検診機関に送られ、データが分析される技術です。そして疾患が発見された場合には本人に精密検査を促すメールが送られます。この技術のため本人は通常に生活をしているだけで早期発見が可能になります。今日までにベッド、風呂、シャワー、トイレ、イスなどで過ごす間に無意識的に各種の検査データを収集するシステムが開発されています。

ベッド

上図のごとく綿のベッドシーツと枕の上に、布の感触をもつ特殊な布帛(ふはく)電極をセットして計測装置につなぐと、就寝中に右図のような病院検査同様の心電図が得られる。 寝る前に体表にセンサを装着するなど面倒なことをすることなく、ベッド内にセンサを組み込むことで、就寝中の身体の生理学的変化を検査することが目的である。ベッドでは通常のパジャマを着て寝るだけで心電図、呼吸活動、体温、体重、寝返り度数、発汗などを時間を追って(時系列的に)検査することが可能である。ベッド上では自由行動のため検査値に誤った値を検出する(電気的雑音が混入する)ことがあるが、就寝時間は(たとえば体動時間と比べて)長いため統計的な処理で誤差を小さくすることが可能である。

風呂

上図のように浴槽の内側に特殊な電極を複数個、決められた位置に取りつけて計測装置につなぐと入浴心電図が得られる。心電図から心拍数を抽出すると右図のような入浴中の心拍数変化が見られる(0秒で入浴開始、約170秒であがり)。 入浴前に体表にセンサを装着するなど面倒なことなく、浴槽内にセンサを組み込むことで、入浴中の身体の生理学的変化を検査することが目的である。お風呂ではお湯に静かに入っているだけで、心電図、発汗成分などを時間を追って(時系列的に)検査することが可能である。病院の検査では運動や糖などの負荷をかけて、臓器の働きを検査する負荷試験と呼ばれる検査法があるが、お湯は一種の負荷になり、入浴は家庭で心機能の負荷試験をすることでもある。計測装置の電源スイッチを浴室の照明スイッチと連動させることで、あえて検査を意識しなくても(無意識的に)長期的な検査が可能である。

シャワー

上図のようにシャワーノズル内と足元に特殊な電極を設置して計測装置につなぐと、シャワー中の心電図が得られる。心電図から心拍数を抽出すると右図のような洗髪中の心拍数変化が見られる。 シャワーを浴びる前に体表にセンサを装着するなど面倒なことなく、ノズルなどにセンサを組み込むことで、シャワー中の心電図を検査することが目的である。洗髪は、特に高齢者などには、心臓への負担が大きい。お風呂場をのぞいていなくてもその時の心電図や心拍数を外でモニターすることで、危険を回避できる可能性がある。ただし労作中は筋肉からも電気を発生するため、一部心拍数が正確に得られない部分もある(右図の点が飛んだ部分)。しかし心拍上昇の危険な傾向などは読み取ることが可能である。

トイレ

上図のごとく便座の上に特殊なセンサを装備して計測装置につなぐと、座るだけでトイレ中の心電図が得られる。たとえば便秘のため努力して排便をすると、右図のような心拍数の急峻な上昇が見られる。 毎回トイレに行く前に心電図のセンサを体表に装着することなく、便座にセンサを装備することで、排便中の心電図を検査するごとが目的である。無理な排便は身体に大きな負担がかかることがあるが、用便中のトイレ内をのぞいていなくても、その時の心拍数を外でモニターすることで危険を回避できる可能性がある。計測装置の電源スイッチはトイレ便座内の圧スイッチと連動させることで、座るだけで検査が始まるため検査のための行動を一切省くことが出来る。このような完全自動の検査法が無意識検査法である。

長期的な検診データからの数ヶ月先の健康予測

日々の検査値が得られるユビキタス検査は個人正常値の発見などの「個の医療」を促進し、健康維持に貢献します。しかしさらには、日々の検査値を長期的に収集してそれに統計的な手法を加えることで、近未来の健康推移を推定することが可能になるでしょう。大量の検査データからのデータマイニングはまだまだ黎明期です。しかし私たちは今日までに日々2年間の睡眠時安静心電図や、2年間の入浴負荷心電図を収集して、その解析アルゴリズムを開発してきました。その一つの結果として、加齢による変化だけではなく、各種の周期的な身体の生理学的変化を発見しています。医科学的なバイオリズムの発見です。
軽い運動のあと、少し休めばとれる疲れが日によっては何時間も抜けないことがある。すなわち同じ負荷をかけても回復時間が時によって違う。小児や高齢者などで起こる日和見(ひよりみ)感染は通常は阻止されるが、抵抗力が弱くなった時に病原体がおこす感染症である。 さて、日常の入浴は身体にある程度の負荷がかかる作業である。よって入浴直後、心拍数は一時的に上昇する。そしてピークに達したのち、心拍数はゆるやかに降下(回復)してゆく。左上のグラフはその心拍の回復速度(実線)を2年間にわたって調べたものである。左軸の数字が大きいほど回復スピードが速い。グラフの点(dot)は右軸の大気の気温に対応し、2月に寒く8月に暑い状態を示している。 心拍の回復速度は冬に遅く夏に速い様子を示しているが、さらに、この被験者では50日ほどの周期で回復速度が遅くなっていることがわかる。この回復が遅い時期(例えばこの被験者では3月始め)に激しいスポーツや海外旅行など大きな負荷がかかると、心拍(心機能の一部)が回復しにくい危険性がある。高齢者などでは特に、日々入浴心電図を得ることで自分の周期を知り、次に来る不調期を予測することで危険を回避することが可能になると考えられる。

味覚神経における動的感覚情報コーディングの研究

舌の味蕾にある味細胞は毎日多くの細胞が寿命を終えて消失し、新しい細胞に入れ替わっています。つまり味細胞とその情報を受け取り中枢に伝える感覚神経との間の結合(シナプス)は毎日解離と再結合を繰り返しているのです。このような動的条件下で、どういうしくみで甘い、しょっぱいといった味の情報が安定して脳に伝えられるのかを動物実験で調べています。

慢性埋め込み型微小電極アレイを用いた神経インターフェイスの研究

視覚を失った人の視神経にビデオカメラからの出力を直接結合してものを見せることが出来たら素晴らしいと思いませんか。近い将来そんな夢のような話が実現するかもしれません。しかしそのためにはイメージセンサーからの信号を感覚神経に伝えるための神経インターフェイスの開発が必要です。マイクロマシン工法で作製した微小電極アレイを動物(ラット)の感覚神経に慢性的に埋め込んで電気刺激し、人工的に感覚を生じさせる研究を行っています。

心電図を用いた個人識別に関する研究

現在,指紋や静脈など,さまざまな生体的特徴を用いた個人識別システムが研究され,実用化されています。本研究では,その新しい手段として心電図を用いた個人識別に関する研究を進めています。心電図の波形には個人差があり,そこから特徴量を取り出し,他人の特徴量と異なるかどうかを判定することにより個人識別を実現します。

ディーゼル排気ガスの生体影響解析

近年,ディーゼル排気ガスに含まれる粉塵が生体に与える影響が注目を集めています。この研究ではディーゼル排気ガスの生体影響調査を目的とし,実験動物に排気ガスを曝露したときに計測された生体信号を解析しています。解析には信号処理あるいは統計処理の手法を利用し,排気ガスの濃度や,排気ガスに含まれる粒子状物質の有無が生体にどのような影響を与えるかを明らかにしています。
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